「薬屋のひとりごと」第31話『選択の廟』— 猫猫が導かれる運命の分岐点

小蘭の付き添いで手習い所を訪れた猫猫は、講師の老宦官が語る“選択の廟”に興味を抱く。そこは「この地を治める者は通らねばならず、正しい道を選んだ者だけが長となる」と言われる不思議な場所だった。

一方、日常の毒見役として帝と玉葉妃に仕えていた猫猫は、突然帝から同行を命じられる。同じく呼び出された壬氏と共に向かった先は、まさにその“選択の廟”。

帝が猫猫と壬氏を連れてきた理由とは？ そして、この廟に隠された意味とは？ 予期せぬ展開が猫猫を待ち受ける——。

選択の廟とは—猫猫が聞いた不思議な伝承

後宮の片隅にある手習い所を訪れた猫猫は、老宦官から興味深い話を聞くことになる。

その話の中心にあるのは、「選択の廟」と呼ばれる謎めいた場所だった。

そこは、過去の支配者たちが通ったとされる、運命を分かつ試練の場だという。

老宦官が語る“正しい道を選ぶ”試練

「この国を治める者は、選択の廟を通らねばならん」

そう語る老宦官の声には、どこか厳粛な響きがあった。

彼によると、選択の廟には二つの道があり、訪れる者は正しい道を選ばなければならないのだという。

しかし、その「正しい道」とは何を指すのか、老宦官は多くを語らなかった。

「誤った道を選べば……ふむ、それは自分の目で確かめるといい」

過去の支配者たちが通った運命の場所

選択の廟を通った者たちの中には、後に帝となった者もいれば、宮廷から姿を消した者もいるという。

「選択を誤った者がどうなったか、それは誰も語りたがらん」

老宦官は意味深な言葉を残し、話題を変えてしまった。

猫猫はその態度に違和感を覚えつつも、「選択の廟」がただの伝説ではないことを確信する。

そして、その場所にまつわる秘密が、思わぬ形で自分の運命に関わることになるとは、まだ知らなかった。

猫猫、帝からの突然の呼び出し

いつものように後宮で毒見役を務めていた猫猫は、突然の知らせを受ける。

「帝がお呼びだ」

この言葉に、周囲の女官たちがざわめく中、猫猫自身も意外に思った。

毒見役としての役目以上に、帝に関わる機会は少ないはずなのに——。

毒見役の日常が一変する瞬間

普段、猫猫の役目は料理の毒見をし、妃たちの健康を守ることだった。

だが、今回の呼び出しはそのどれとも違う。

「まさか、新たな事件の匂いか？」

そう思いつつも、猫猫は静かに帝のもとへと向かう。

呼び出された理由はわからないが、ただならぬ雰囲気が漂っていた。

壬氏と共に向かう選択の廟

帝の前に通された猫猫は、意外な顔を見つける。

そこには、壬氏が立っていた。

彼の表情はいつになく真剣で、普段の余裕ある態度とはまるで違う。

「猫猫、お前も来るのか」

その言葉に、猫猫は眉をひそめた。

「まるで、これから何か試されるような言い方ですね」

帝は静かに言葉を発した。

「——これより、選択の廟へ向かう」

猫猫の胸に、老宦官の言葉がよみがえる。

『この国を治める者は、選択の廟を通らねばならん』

何か重大なことが起こるのではないか——そんな予感が、猫猫の心をざわつかせた。

選択の廟の謎—帝の真意とは？

夜の静寂に包まれた宮廷の奥、猫猫と壬氏は帝とともに「選択の廟」へと足を踏み入れた。

そこは、古くから歴代の支配者たちが試練を受けたとされる場所。

しかし、帝はなぜ今、この場へ二人を連れてきたのか——その真意は依然として不明だった。

猫猫と壬氏を連れてきた理由

廟の中に入ると、帝はゆっくりと歩を進めながら語り始めた。

「ここは、己の行く道を決める場所……そして、その選択が国をも動かすことになる」

猫猫は眉をひそめる。

「では、なぜ私まで？」

帝は微かに笑い、意味深に答えた。

「お前はいつも、答えを見つけるだろう？」

猫猫はその言葉の意図を測りかねながらも、帝が自分を試そうとしているのを感じた。

試される者の条件とは何か？

廟の奥へ進むと、二つの扉が現れた。

片方の扉は暗く閉ざされ、もう片方はぼんやりとした光を放っている。

「選べ。どちらが正しき道か——」

帝の言葉に、壬氏の表情が固まる。

猫猫もまた、じっと扉を見つめた。

「……選択の廟とは、結局のところ選ばれた者が真にふさわしいかを試す場所なのか」

試されるのは何なのか？

知識か、忠誠心か、それとも……。

猫猫は帝の真意を探るべく、慎重に扉を見極める。

運命の分かれ道—猫猫が導く答え

目の前に並ぶ二つの扉。

片方は暗闇に閉ざされ、もう片方は淡い光を帯びている。

帝の言葉の意味を探りながら、猫猫は考えを巡らせた。

歴史の中に隠された真実

「選択の廟」には、歴代の支配者が通った試練の道がある。

しかし、老宦官の話では誤った道を選んだ者は歴史から消えたとされていた。

「では、彼らはどこへ行ったのか？」

猫猫は廟の床や壁を慎重に観察し、あることに気づいた。

「この廟は、試練のためだけに作られた場所ではない……」

床に残るかすかな傷、壁に隠された隙間。

「これは処刑場としての役割も持っている」

選択を誤った者は、表向きには『姿を消した』ことにされていたのだ。

歴史に名を刻む者と、そうでない者。その分岐点が、この扉の先にあるのかもしれない。

壬氏の素性との関係は？

猫猫がさらに考察を深める中、ふと壬氏の表情が険しくなる。

「まさか……」

猫猫は、壬氏が何かを悟ったような目をしているのを見逃さなかった。

「お前は、この廟に何か関係があるのか？」

壬氏はわずかに口を開きかけたが、すぐに何かを押し殺したように視線をそらした。

猫猫は、彼が何か重要な秘密を抱えていることを確信する。

「これは、壬氏自身の運命にも関わる試練なのか……」

選択の時は迫っていた。

猫猫は目の前の二つの扉を見つめ、ある結論へとたどり着く。

「選択の廟」まとめ—猫猫の未来に迫る影

選択の廟での出来事を経て、猫猫は改めて宮廷の深い闇を感じていた。

この試練は、単なる通過儀礼ではなく国の未来を左右する選択そのものだったのだ。

そして、この試練に壬氏が関わっていることもまた、重大な意味を持っているように思えた。

帝の決断が示す未来

「お前の選択は、正しかったのかもしれんな」

帝はそう呟き、静かに廟を後にした。

猫猫の推理が試された今回の出来事だったが、果たしてその結果は宮廷に何をもたらすのか。

帝が猫猫をこの場に連れてきた理由は単なる好奇心ではなく、未来を託すべきかを見極めるためだったのかもしれない。

そして、それは壬氏にとっても避けられない運命を意味していた。

壬氏と猫猫の関係に変化が…？

廟を出た後、壬氏はどこか考え込んだ様子だった。

「なあ、猫猫……お前はもし、選択を誤ったらどうする？」

普段とは違う、真剣なまなざし。

猫猫は少し考え、淡々と答えた。

「誤ったら……やり直せばいいだけです」

壬氏は一瞬驚いた表情を見せたが、やがて苦笑した。

「……お前は、本当に面白いな」

その言葉の裏には、何か別の感情が込められているように感じられた。

選択の廟での出来事が、壬氏と猫猫の関係にどのような影響を及ぼすのか。

そして、帝の決断が今後の宮廷の流れをどう変えるのか。

その答えが明らかになる日は、そう遠くないかもしれない。