2025年の話題作『LAZARUS ラザロ』を観て、「どこか『BANANA FISH』を思い出す」と感じた視聴者も多いのではないでしょうか。
本記事では、作風・演出・キャラ造形など、両作品に共通するポイントを徹底的に比較・考察。似ていると言われる理由を明らかにしながら、それぞれの作品の魅力を深掘りします。
監督・制作会社・キャラクターデザインなど、クリエイターのつながりから見える“意図的な共通性”にも注目して解説します。
- 『LAZARUS』と『BANANA FISH』の共通点と相違点
- 作画・世界観・演出に見られる類似性の理由
- 視聴者が「似ている」と感じる本質的な背景
『LAZARUS ラザロ』と『BANANA FISH』の基本情報比較
原作・制作陣の共通点:林明美(キャラデザ)×MAPPA(制作)
まず注目すべきは、『LAZARUS ラザロ』と『BANANA FISH』のキャラクターデザインを担当する林明美氏の存在です。
林氏は『BANANA FISH』での美形かつ繊細なキャラクター表現で高く評価されましたが、その技術は『LAZARUS』にも余すところなく発揮されています。
特に目線の描写や髪の揺れ方、体のラインに宿るリアリズムは、視聴者の感情移入を強く促す要素となっています。
また、両作品ともにアニメーション制作を手掛けているのは、実力派スタジオMAPPAです。
『呪術廻戦』『チェンソーマン』など話題作を次々に手がけるMAPPAは、激しいアクションや繊細な心理描写のアニメーションに定評があり、『BANANA FISH』と『LAZARUS』のどちらでもその力量を発揮しています。
このように、両作品には同じクリエイターとスタジオが関与しているため、視覚的なトーンや演出の質感に共通点が見られるのです。
ジャンル構成:サスペンス×アクション×社会的テーマ
『LAZARUS ラザロ』と『BANANA FISH』は、一見すると全く異なる時代背景を持つ作品に思えるかもしれません。
しかしながら、ジャンル構成の視点から見ると「サスペンス」「アクション」「社会的なメッセージ」という3つの大きな共通項があります。
『BANANA FISH』は、ニューヨークを舞台に麻薬戦争や組織犯罪と戦う若者たちの人間ドラマが展開されます。
一方『LAZARUS』では、副作用のない奇跡の薬「ハプナ」が実は死をもたらすという陰謀が中心に据えられ、チーム「ラザロ」が人類の未来を守るべく奔走します。
両作ともに「薬物」「陰謀」「暴力構造への抵抗」といった現代社会に通じるテーマを描いている点が、作品の深みを与えています。
また、登場人物たちはいずれも、過酷な状況に翻弄されながらも自らの信念で戦う者たちとして描かれており、視聴者の共感と没入感を呼び起こします。
このように、ジャンルの組み立て方にも共鳴が見られ、両作品が似ていると評される理由のひとつとなっているのです。
共通する世界観:都市・陰謀・薬物という現代的題材
『ハプナ』と『BANANA FISH』──薬を巡る陰謀と戦い
『LAZARUS ラザロ』に登場する万能薬「ハプナ」は、人類を救うはずの夢の薬として世界中に広まりますが、実はその裏に人類を滅ぼすための陰謀が隠されていました。
このプロットは、『BANANA FISH』に登場する精神を崩壊させ支配する薬「バナナフィッシュ」と非常に似た構造を持っています。
両作品ともに、薬物という存在が単なる道具としてではなく、人の自由意志や尊厳を奪う“支配の象徴”として描かれている点が共通しています。
また、どちらの物語も、薬を巡る巨大な陰謀と、それに抗う主人公たちの戦いが中心に据えられており、社会的・倫理的なテーマ性が強く打ち出されています。
こうした薬物にまつわる構造的な支配と、それに対抗する人間の物語は、「自由対管理」「人間性対無機質な権力」といった現代的な対立構図を深く掘り下げる上でも非常に効果的に機能しています。
都会を舞台に繰り広げられる命を懸けた逃走劇
『LAZARUS』と『BANANA FISH』のもう一つの大きな共通点は、都市という舞台設定にあります。
『BANANA FISH』ではニューヨーク、『LAZARUS』では2052年の未来都市が舞台となり、いずれも高層ビルが立ち並ぶ無機質な都市空間の中で、主人公たちが命を懸けて逃走し、戦い、真実を追い求める様子が描かれます。
このような都市空間は、リアリティと閉塞感を同時に与える舞台として機能し、個人の孤独や圧倒的な権力への抵抗というドラマをより鮮明に浮かび上がらせます。
また、都市という舞台で描かれるアクションや心理描写は、スピード感や緊張感を生む演出とも非常に相性が良く、視聴者を作品世界へ一気に引き込む要因ともなっています。
このように、薬物・陰謀・都市という要素の掛け合わせが、『LAZARUS ラザロ』と『BANANA FISH』の世界観において非常に近い雰囲気を生み出しているのです。
作画・キャラクターデザインの類似性を検証
線の細さとリアル志向の美形キャラ
『LAZARUS ラザロ』と『BANANA FISH』のビジュアル面において、最も視覚的に強い共通点として挙げられるのが、“線の細さとリアル志向のキャラクターデザイン”です。
この共通点は、どちらの作品もキャラクターデザインを林明美氏が担当していることに起因しています。
林氏の描くキャラクターは、実在感のある骨格と繊細な感情を映し出す表情設計を持ち、決して過度にデフォルメされることなく、視聴者に“本物の人間のような魅力”を与えています。
特に、主人公キャラ──『BANANA FISH』のアッシュと、『LAZARUS』のアクセル──においては、鋭い目元・細身のスタイル・静かな哀愁をまとった雰囲気などが非常によく似ており、視覚的なシンクロ率の高さが際立ちます。
このようなキャラ設計は、リアルな社会背景や心理描写を扱う作品にとって非常に相性が良く、ストーリーの深みをより強調する要素として機能しています。
アクション演出のキレと静と動の緩急
作画面におけるもう一つの重要な類似点が、アクションシーンのキレと緩急の演出バランスです。
『BANANA FISH』では、銃撃や追跡などのアクションシーンがリアルタイムで展開されつつも、キャラの呼吸や一瞬の沈黙といった“間”が丁寧に描かれており、まるで実写映画のような没入感を生み出しています。
一方、『LAZARUS』ではMAPPAの圧倒的な作画力と、『ジョン・ウィック』シリーズの監督チャド・スタエルスキのアクション監修によって、モーションキャプチャ級のリアリティとスタイリッシュな演出が融合しています。
ジャンプや回避、射撃といった動作一つひとつに“重さ”と“勢い”があり、観る者の感情に物理的な緊張感を与えるようなアニメーションに仕上がっています。
また、どちらの作品にも共通するのが、アクション直後の“静”を生かした演出です。
たとえば、激しい戦闘のあとに訪れる無音の瞬間や、キャラの沈黙を描写する構図の美しさは、視覚だけでなく“感情の揺らぎ”を視聴者に伝える力を持っています。
物語構成とテーマの共通点・相違点
時間制限の中で人類を救うVS犯罪組織との攻防
『LAZARUS ラザロ』と『BANANA FISH』は、いずれも緊張感のある物語構成を持ちながら、物語のスケールや進行スタイルに明確な違いがあります。
『LAZARUS』は「30日以内に全人類が死に至る」という明確なタイムリミットが設定されており、ミッション型・タイムアタック型のストーリー構造となっています。
そのため、展開はテンポよく進み、エージェントチーム「ラザロ」が情報を追い、敵を追跡し、手がかりを掴むというスパイアクションのような緊張感が続きます。
一方、『BANANA FISH』では、アッシュ・リンクスという少年が犯罪組織に囚われた過去と闘いながら、自らの人生を取り戻そうとする物語です。
こちらはタイムリミットではなく、次々と迫る危機に対応していく連続ドラマ型のストーリーであり、人物描写や関係性の変化に重点が置かれています。
共通するのは、「自由を奪うシステムへの抵抗」と「抗えない暴力に立ち向かう若者たちの姿」。
ただし、『LAZARUS』が地球規模の危機と向き合うエンタメ的構成なのに対し、『BANANA FISH』はより私的な闘争を通じて社会構造の歪みを描く作品である点に違いがあります。
『BANANA FISH』は“人間ドラマ重視”、『LAZARUS』は“エンタメSF重視”
両作品の演出スタイルにも、作品の本質を物語るコントラストがあります。
『BANANA FISH』は終始、登場人物たちの繊細な感情のやりとりに焦点が当てられており、静かな会話、視線、沈黙、触れ合いといった“間”を活かした演出が目立ちます。
その分、キャラクターたちの心の動きが丁寧に描かれ、視聴者は感情移入しやすく、深い人間関係のドラマに引き込まれていきます。
対して『LAZARUS』は、近未来SFをベースとした世界観にふさわしく、アクション性、サスペンス、サイバー要素といったエンターテインメント性を優先した構成になっています。
感情描写は抑制されつつも、キャラクターの信念や生き様がアクションに現れる構成となっており、まるで映画のような演出設計が特徴です。
このように、人間の“内面”を丁寧に掘り下げる『BANANA FISH』と、“状況と行動”を軸にエンタメに徹する『LAZARUS』は、アプローチの違いが明確ながら、視聴者の心を動かす力は共通して持っています。
『LAZARUS ラザロ』と『BANANA FISH』が似てる理由まとめ
ここまで比較してきた通り、『LAZARUS ラザロ』と『BANANA FISH』には以下のような多くの共通点があります。
- 林明美氏によるリアル志向のキャラクターデザイン
- MAPPAによる高品質なアニメーション制作
- 薬物と陰謀を軸にした社会的メッセージ
- 都市を舞台とした逃走劇と孤独な闘い
- 抑制された演出と強いテーマ性を持つ作風
ただし、『BANANA FISH』は感情に寄り添う人間ドラマ寄りの作品であるのに対し、『LAZARUS』はアクション重視の近未来エンタメSFであるという明確な違いも存在します。
それでも、多くの視聴者が「なんとなく似ている」と感じるのは、“反逆者の眼差し”と“抑圧に抗う物語”という深層での共鳴があるからではないでしょうか。
社会構造に挑む若者たちの姿を描くこの2作品は、世代や背景を超えて共通する“普遍的な闘い”を提示しており、だからこそ、多くの視聴者の心に深く刺さるのです。
- 林明美氏のキャラデザインやMAPPA制作による共通演出
- 薬物と陰謀をめぐる社会的テーマの構造が酷似
- 都市を舞台にした逃走劇と抗う若者たちの姿が重なる
- アクション重視の『LAZARUS』と人間ドラマ重視の『BANANA FISH』という違い
- 視聴者が感じる「似てる」は“反逆と自由”という本質的テーマの共鳴
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