アニメ『夢中さ、きみに。』目高が感じた“嫌悪”と“共感”　二階堂との関係に変化が訪れる瞬間

『夢中さ、きみに。』の中でも特に注目を集めているのが、目高優一と二階堂明の複雑な関係です。

目高が感じる“嫌悪”と“共感”という相反する感情の間で揺れ動く心理描写は、多くの視聴者・読者の共感を呼んでいます。

本記事では、そんな二人の関係性に変化が訪れる瞬間に焦点を当て、その背景にある感情の揺らぎや成長の過程を丁寧に紐解いていきます。

目高と二階堂の関係に変化が訪れた瞬間とは？

それまで目高にとって、二階堂はただ“気味の悪いクラスメイト”にすぎませんでした。

しかし、その印象を根底から覆す出来事が起こります。

それこそが、「恐怖の修学旅行編」で描かれるある一夜の出来事でした。

きっかけは“恐怖の修学旅行編”の出来事

目高と二階堂の関係が決定的に変わるのは、修学旅行の夜、同じ部屋での“不可解な沈黙”とその後の会話がきっかけでした。

周囲の生徒たちは二階堂を避け、部屋に近づこうともしませんでしたが、目高だけが部屋を共にすることになったのです。

無言の時間が流れるなか、突如として二階堂がぽつりと漏らした一言が、目高の胸を打ちました。

その言葉には、これまでの“気味悪さ”の裏にあった孤独や自嘲、そして人と関わることへの恐れが滲み出ていました。

「本当は、誰とも話さない方がラクなんだよ」という二階堂の言葉に、目高は共感とも嫌悪ともつかない揺らぎを感じます。

この瞬間こそが、二人の関係が単なる「隣の席の変人」から、「理解しようとする相手」へと変わった分岐点だったのです。

共感の芽生えと、二階堂の素顔を知る瞬間

修学旅行中のやりとりの中で、目高は“作られた二階堂像”ではなく、素の表情を垣間見ることになります。

二階堂の話す過去や、今の自分をどう思っているのかという問いに、目高は戸惑いながらも耳を傾けました。

その態度こそが、二階堂にとっては特別だったのです。

二階堂は誰かに否定される前に、自らを否定して生きてきた人物。

それを目高は完全に理解したわけではありませんが、“あの夜に見た目線の揺らぎ”を、ずっと心の中に引きずることになります。

このようにして、嫌悪と共感の境界線は、少しずつ曖昧になっていきました。

目高が抱いた“嫌悪”の正体と背景

目高が二階堂に対して初めに抱いた感情は、明確な敵意ではなく、どこか居心地の悪さを感じる“嫌悪感”でした。

その違和感には、目高自身も理由をはっきりと言語化できずにいました。

しかし、その裏には無意識に働いた“人間の心理”が隠されていたのです。

周囲の噂と、二階堂の“逆・高校デビュー”の影響

二階堂は「関わると呪われる」「目が合うと不幸になる」といった、誇張された噂でクラス内に孤立していました。

目高もまた、転校生として周囲と微妙な距離を保っていた存在でしたが、それ以上に“異質”だったのが二階堂です。

後に明かされるように、彼の“逆・高校デビュー”は、過去の経験から自己防衛としての選択でした。

中学時代に“モテすぎた”ことで、周囲に気を遣いすぎ、結果として心を病んだ二階堂。

その反動として今のキャラを作り上げた彼にとって、他人の視線は常に“敵意”に変換されていたのです。

しかし、それは目高にとって作りすぎたキャラ＝不自然な存在として映りました。

初対面から抱いた拒否反応と戸惑い

目高が初めて二階堂の後ろの席に座った日。

その異様な佇まいに、思わずゾクリとしたと語っています。

無言のまま、ずっとこちらを見ているような視線、不自然な距離感、奇抜な服装や動作――。

その全てが、目高にとっては“自分と違いすぎる”ことの証明に思えたのです。

だからこそ、理解できない＝不快という、本能的な拒絶反応が起きたのかもしれません。

実際、目高は何度も自分自身に「別に嫌いじゃない」と言い聞かせながらも、なぜか近づけない“壁”のようなものを感じていました。

しかしその“壁”が、いつしか少しずつほころび始めることになります。

“共感”を抱いた理由とその変化の過程

“嫌悪”という第一印象から始まった目高の感情は、やがて“共感”という名の理解へと変化していきます。

そのきっかけとなったのは、実は目高自身の中に潜む孤独や葛藤でした。

それらが、静かに、しかし確かに、二階堂の中に“映って”いたのです。

目高自身の孤独と、二階堂に重ねた感情

目高は、明るく振る舞いながらも、どこかクラス内で一歩引いた存在でした。

周囲に完全には馴染めず、でも誰かとぶつかる勇気もない。

そんな曖昧な立ち位置に、彼自身、どこか無力感を抱いていたのです。

そんな中で出会ったのが、自らを異質な存在に仕立ててまで、他者との関係を断とうとする二階堂でした。

最初はただの“変人”にしか見えなかったその姿に、次第に目高は、自分が感じていた孤独の裏返しを見出していきます。

「あいつも、もしかしたら俺と同じなのかもしれない」――その気づきが、目高にとっての大きな変化でした。

日常のやりとりに見えた人間味とギャップ

共通の課題、日直、席替えなど、何気ない学校生活の中で、目高は少しずつ二階堂の“素”に触れていきます。

たとえば、消しゴムを貸しただけで妙に感謝されたり、独り言のような声で漫画の感想を呟いていたり――。

そんな小さな出来事の一つひとつが、目高の中で“共感”として蓄積されていきました。

目高にとって印象的だったのは、二階堂が誰かと話している時だけ、ほんの少しだけ表情が和らぐ瞬間でした。

それは、自分が思っていたような「人を遠ざけるための演技」ではなく、本当は誰かに近づきたいという“矛盾”を抱えた人間そのもの。

だからこそ、目高は「この人は怖い存在じゃない」と思えるようになっていったのです。

二階堂の視点から見る目高との距離感

これまで“他人と関わらない”ことを信条にしていた二階堂。

そんな彼にとって、目高という存在は“例外”の始まりでした。

無理に話しかけず、それでいて拒絶もしない――そんな微妙な距離感が、二階堂の心に静かに変化をもたらしていきます。

クラスメイトとしての関わり方の変化

最初、二階堂は目高を「普通に避けない人」として見ていました。

けれど、それが次第に、“隣にいても平気な人”へと変化していきます。

そのきっかけとなったのは、日常の些細なやりとり――たとえば、教科書を忘れたときに当たり前のように貸してくれたこと。

それに驚きつつも、二階堂はその“普通さ”に安心感を覚えるようになったのです。

「何も期待されていない」ことが心地よく、目高の距離の取り方は、二階堂にとって理想的だったのでしょう。

その距離の中で、少しずつ心の扉が開いていったことは想像に難くありません。

自らの“仮面”を外すきっかけになった目高の存在

二階堂にとっての“逆・高校デビュー”は、他人から身を守るための仮面でした。

明らかに奇抜な服装や無表情な態度、それら全ては「これ以上、期待されたくない」という心の叫びだったのです。

しかし、目高と関わる中で、自分を取り繕わなくても“見放されない”存在がいることに気づいていきました。

とくに修学旅行の夜、ぽつりと語った言葉を黙って受け止めた目高に、初めて“素のまま”で話してもいいのかもしれないと思った二階堂。

そのとき彼は、自分の中にあった仮面の一部が剥がれる音を、確かに感じていたのではないでしょうか。

目高という存在が、“嫌悪されない自分”を見つけるきっかけになった――それこそが、彼の目線での関係性の変化だったのです。

目高が感じた“嫌悪”と“共感”　二階堂との関係性の変化のまとめ

目高と二階堂の関係は、最初から分かりやすい友情や好意で結ばれていたわけではありません。

“嫌悪”と“共感”という、真逆の感情が同居する不思議な距離感から始まりました。

しかし、その曖昧さこそが、この作品の魅力であり、リアルな人間関係の象徴でもあります。

“恐怖の修学旅行編”を経て、目高は二階堂の仮面の奥にある素顔に気づきました。

そして、自分自身の中にもあった不安や孤独、社会に対する無力感と向き合うきっかけを得たのです。

それは、“嫌悪”が“理解”へと変わっていく過程でもありました。

一方で二階堂も、目高という存在を通じて「人と関わること」に新しい意味を見出します。

それまで避けてきた“素の自分”でいられる相手に出会ったことで、少しずつ心の仮面が外れていったのです。

その変化は派手なものではありませんが、確かに「関係性の温度」が変わった瞬間でした。

“嫌悪”から始まる感情も、見方を変えれば“共感”の入口なのかもしれません。

目高と二階堂が見せたその変化の物語は、私たちが人と接する中で感じる矛盾や戸惑いにも通じています。

だからこそ、この関係は“青春”のど真ん中にある、ひとつのリアルな記録なのです。