「薬屋のひとりごと」第30話『みたび、水晶宮』— 猫猫が探る宮廷の闇と隠された秘密

猫猫は医官ではないにもかかわらず、独自に薬を調合していたことが診療所の女官・深緑に知られてしまう。お咎めはなかったものの、彼女から「水晶宮の下女に薬を作ってほしい」と頼まれる。

その下女は長らく体調を崩し、何度も診療を勧められていたが、半月前から姿を見せなくなっていたという。梨花妃の看病の際にも感じた水晶宮の不穏な空気を思い出し、猫猫は疑念を抱きつつも水晶宮へと足を運ぶ。

そこで彼女が目にしたものとは？ 水晶宮に隠された秘密とは？ 宮廷の闇に迫る猫猫の推理が始まる——。

水晶宮の下女が消えた—猫猫に持ちかけられた依頼

後宮で日々毒見役を務める猫猫のもとに、ある日、診療所の女官・深緑が訪れた。

彼女は「水晶宮の下女が突然姿を消した」と言い、猫猫に助けを求める。

半月前まで何度も診療を受けていた下女が、急に診療所へ現れなくなったというのだ。

診療所の女官・深緑からの頼み

深緑は、日頃から診療所に通う下女たちの健康状態を気にかけていた。

消えた下女は長年体調を崩しがちだったが、最近は特に容態が悪化していたという。

何度も診療を勧めたにもかかわらず、突然姿を見せなくなったため、不審に思い猫猫へ相談を持ちかけたのだった。

長年体調を崩していた下女の謎

深緑によると、消えた下女は「夜になると咳が止まらない」と訴えていたという。

しかし、病状の割に血色が悪くなく、診察のたびにどこか焦っているように見えた。

猫猫はこの話を聞き、「何か隠しているのかもしれない」と直感する。

さらに水晶宮の侍女たちの間では、彼女に関する噂話もあったらしい。

猫猫はこの謎を解くため、水晶宮へ足を運ぶことを決意する。

猫猫、水晶宮を訪れる—宮廷に漂う違和感

水晶宮は、梨花妃が暮らす静かな宮殿だ。

しかし、猫猫が訪れると、そこには妙な空気が漂っていた。

侍女たちはどこか落ち着かず、互いに目を合わせるのを避けるようにしている。

梨花妃の看病時に感じた異様な空気

以前、猫猫は梨花妃の看病のために水晶宮を訪れていた。

その時、侍女たちが必要以上に静かで、不自然な動きをしていたことを思い出す。

まるで何かを隠しているかのように、ひそひそとした会話が後を絶たなかった。

猫猫は「何か問題が起きているのでは」と感じつつも、確証が持てなかった。

水晶宮の侍女たちの不審な様子

今回改めて水晶宮を訪れた猫猫は、侍女たちの態度にさらに違和感を覚える。

彼女たちは、猫猫の存在に気づくと、一瞬驚いた表情を浮かべるが、すぐに目をそらし、忙しそうに動き回る。

また、猫猫が話しかけても、短い返事しかせず、明らかに警戒している様子だった。

「まるで、何かを知られたくないみたいだな……」

そう考えた猫猫は、姿を消した下女の行方を探るべく、本格的に調査を始めることを決意する。

隠された真実—水晶宮に秘められた闇とは？

猫猫の調査が進むにつれ、水晶宮にまつわる不穏な噂が浮かび上がってきた。

消えた下女に関する話は、侍女たちの間でもタブー視されており、誰も詳しく語ろうとしない。

猫猫は水晶宮の奥へと足を踏み入れ、ついに重要な手がかりを見つける。

猫猫が見つけた手がかり

水晶宮の使用人たちの動きを観察する中で、猫猫はあることに気づいた。

侍女たちが特定の部屋に入るたびに、警戒した様子で周囲を見回していたのだ。

好奇心を抑えきれず、その部屋に忍び込んだ猫猫は、**血の跡がついた布**と、何かをこぼしたような薬のにおいを嗅ぎ取った。

「これは……毒？」

猫猫は慎重に布を拾い上げ、念入りに観察する。

それは単なる汚れではなく、誰かが隠そうとした痕跡だった。

消えた下女の行方とその理由

さらに調査を進めると、侍女の一人がこっそり薬を処分している場面に遭遇した。

猫猫は機転を利かせ、その侍女に軽く話しかける。

「ねえ、その薬は誰のもの？」

驚いた様子の侍女は、一瞬ためらった後、ぽつりと口を開いた。

「あの下女のもの……でも、もう戻ってこないから……」

猫猫はこの言葉から、下女が何者かによって消された可能性を考え始める。

病気で亡くなったのではなく、**意図的に姿を消されたのではないか？**

水晶宮に隠された闇が、徐々にその姿を現し始めていた。

宮廷の陰謀—猫猫の推理が導く答え

水晶宮に隠された闇を追う猫猫は、次第に事態の核心へと迫っていった。

消えた下女の行方を追ううちに、彼女が単なる病ではなく何者かによって口封じされた可能性が浮かび上がる。

そんな中、猫猫は宮廷の奥深くに渦巻く陰謀の影を感じ取るのだった。

壬氏は何を知っているのか？

猫猫の推理を裏付けるように、壬氏もまた水晶宮の動向を気にかけていた。

「お前、また妙なところを嗅ぎ回っているな」

そう言って微笑む壬氏の表情には、いつもの余裕がなかった。

彼は何かを知っている。しかし、それを猫猫に明かすつもりはないらしい。

「お前はあまり深入りするな。水晶宮には……触れてはいけない秘密がある」

その言葉に、猫猫はますます興味を抱いた。

猫猫が気づいた“水晶宮の秘密”

壬氏の警告を受けた猫猫だったが、それでも調査を続けた。

そして、ついにある決定的な事実に気づく。

消えた下女が診療所に通っていた理由、それは病ではなく、**毒を盛られていたから**だった。

しかも、その毒は妊娠を阻害する作用を持つものだったのだ。

「つまり……誰かが、意図的に水晶宮の女性たちに毒を？」

猫猫は背筋が冷たくなるのを感じた。

水晶宮では、長年にわたりある計画が密かに進められていたのだ。

「みたび、水晶宮」まとめ—猫猫の次なる一手

猫猫の調査によって、水晶宮に隠された陰謀の輪郭が明らかになった。

消えた下女の存在は、単なる失踪ではなく水晶宮全体を覆う秘密と深く関わっていたのだ。

猫猫は、次なる一手をどう打つべきか思案する。

水晶宮の事件が意味するもの

今回の事件を通じて、猫猫は改めて宮廷の闇の深さを思い知ることとなった。

水晶宮で進められていた計画は、単なる個人的なものではなく宮廷の勢力争いに関わるものだった可能性が高い。

梨花妃のもとで起こった異変、侍女たちの異様な態度、そして妊娠を阻害する毒。

すべては一つの大きな目的のために仕組まれていたのだ。

次なる展開への伏線とは？

壬氏の態度も気になるところだ。

彼は明らかに何かを知っており、それを猫猫に伝えないようにしていた。

「これは私が関わるべき問題なのか？」

そう考えながらも、猫猫はすでに答えを出していた。

「……気になってしまったものは仕方ない」

猫猫の好奇心は、次なる謎へと向かっていく。

水晶宮での一件は終わったが、それはさらなる事件の始まりにすぎなかった。